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  <title>undiscovered exploit</title>
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  <description>アンディスカバード エクスプロイト</description>
  <lastBuildDate>Thu, 09 Sep 2010 03:14:07 GMT</lastBuildDate>
  <language>ja</language>
  <copyright>© Ninja Tools Inc.</copyright>
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    <item>
    <title>１５</title>
    <description>
    <![CDATA[　あれから、数週間が過ぎた。<br />
　直江は一条方の拠点であるパチンコ店への潜入を数日後に控え、下準備として高知市内へとやってきていた。目的はある一条方名義の株式会社で、件のパチンコ店の本社として登録されている会社だ。<br />
　視察調査を終えて、あとは帰途につくばかり。さすがに今日は諜報班の監視の目もないようだし、久しぶりに天満に会ってみることにした。<br />
<br />
<br />
　相変わらず地域住民で賑わうアジトへ赴くと、やはり相変わらず天満は裏の畑にいるという。<br />
　建物の裏へ回ってみると、思わぬ客が来ていた。<br />
　作業服姿の天満の隣に、Ｙシャツ姿で畑を手伝わされている小松がいたのだ。<br />
「橘か、よく来たのう！」<br />
　片手を挙げる天満の横で、小松は直江に向かって仁王立ちだ。<br />
「やってくれたな、橘サン」<br />
　今回のことは全て直江が段取りしたことを、小松は既に知っているようだ。相当恨まれているかと思いきや、案外あっさりしたものだった。<br />
「イイ性格してるよ、あんた。ただ顔がイイだけじゃあなかったんだな」<br />
　怒っているどころか上機嫌のように見える。<br />
　実は、この男もただでは転ばなかったのだ。<br />
　なんとその後、小松は赤鯨衆の名使わない全くの別組織として、投資事業組合を立ち上げた。<br />
　福祉施設を買い上げ、天満を最高経営者として出資を募り、集めた金を小松の手で運営し、儲けで施設を経営する。運用型福祉ファンドというべきものだ。天満が年寄りからお金を集めたことがヒントになったらしい。立ち上げ後すぐ、経営難の教育施設、医療機関などからコンタクトがあり、今はそれらも傘下に加わえることを検討中だという。<br />
　現在、日本の総貯蓄額は軽く一千兆円を超える。しかし、その殆どが投資などにまわされることは無く、動くことのないその金を皮肉って「不動産」などと呼ぶ人もあるそうだ。それらを小松は利潤などの利点でなく、天満の人柄で引き出すことを考えたのだ。<br />
　赤鯨衆はあくまでも出資先のひとつとして扱うこととした。もちろん、経営上の建前としての話で、裏では密接に繋がっている。更に小松は赤鯨衆諜報班の人間を説得し、経済情報も集めさせることに成功した。今はその情報を元に資金を運用している。中には違法な情報もあるようだが、情報の収集方法が特殊だからいざ犯罪の立証となるとむずかしいだろう。<br />
「うまくいっているようだな」<br />
　小松の表情が依然とはまるで違う。そこには確かな充実感があった。<br />
「まあ、ね」<br />
　と、近くの木の枝に引っ掛けてあった小松のスーツの上着から、携帯の着信音が鳴り始めた。<br />
「おっと」<br />
　小松は慌てて取りに行き、その電話に出た。<br />
「結局、切れなかったんだな」<br />
　残された直江は、天満に言った。<br />
　直江の計画では、小松は追放もしくは諜報班に引渡しというシナリオになっていたのだが、天満には出来なかったようだ。<br />
「武市さんのようにはなれん」<br />
　その言葉に込められた複雑な想いに、直江はただ黙るしかなかった。<br />
　それは武市のように正道を貫く生き方が出来ないという言う意味か、それとも仲間を裏切るようなことは出来ないという意味か。<br />
　どちらにしても結果的には切らずにおいて成功したのだから、あまり深く考えないようにしよう、などと考えていると、天満が何気なく言った。<br />
「おんしのことも切らん。たとえ換生者だとしてもな」<br />
　とっさには声がでなかった。<br />
「何故、山神の神官などと名乗っているのか、どうやって例のヤクザ者の息子に憑いてた霊を消し去ったのか、疑問は山ほどあるがの」<br />
　天満は直江の方をみて、ニヤリと笑った。<br />
「………何の話だ？」<br />
「もう、隠さんでええ」<br />
　そんな様子は微塵もみせなかったから、すっかり油断していたが、天満の霊査能力が秀でているという話は真実だったのだ。<br />
「気付いていたのなら何故言わなかった？試したのか」<br />
「まあ、そがいなところじゃ。いちおう、合格としちょこう。しばらく様子を見ちょっても、赤鯨衆にたてつく様なことはしちょらんようだしの。それどころかおんしはそこらの者よりよっぽど赤鯨衆を理解しちょるき、このことは誰にも言わんつもりじゃ」<br />
「……………」<br />
　理解はしていても、同調しているわけではない。<br />
　なんだかいたたまれなくなって、<br />
「……この先はどうするかわからないぞ」<br />
と、自分の不利になるような馬鹿げたことを思わず口走ってしまう。<br />
　けれど天満はそれを笑い飛ばした。<br />
「わはは、そうしたくなったらいつでも相談に来い！」<br />
　いいカタチで決着がついたと思っていたのに、最後の最後でこれか。<br />
「さて、今日こそ手伝うてもらうからの」<br />
　天満に鍬を渡されて、直江はまたしても深いため息をついた。<br />
<br />
<br />
　この段階で赤鯨衆の資金調達部門だけを別組織としたこと、その組織が（表向き）合法的であったこと、何より安定した資金獲得の方法を確立できたことは、後の赤鯨衆にとっても大きな意味があった。<br />
　この後すぐに敵方をも受け入れる赤鯨衆の精神が知れ渡ることとなり、爆発的に隊士数が増加することとなるが、対応できるだけの現金をすぐに用意できたし、数年後「セキゲイ宗」としてマスコミの非難を浴びた際も、もし以前のような資金集めを行っていたとしたら犯罪集団としても責められていただろうが、そうはならずに済んだ。同時に、「セキゲイ宗」とは別組織としていたことにより、風聞に関係なく安定した資金を確保することもできた。<br />
　他にも、天満と地元住民との交流の経験は、大転換後の復興支援や遍路道上の各寺社や周辺住民への理解を得る際にもずいぶん役立ったという。<br />
　つまり直江を始め天満や小松は、誰も気付くことのなかった、資金源の問題や組織としての合法性・社会性という、言うなれば赤鯨衆の脆弱性の強化を、わずかな人数と期間でやってのけたといえる。<br />
　ところが未だにその働きは誰の目にもとまることなく、いわば未知なる功績として埋もれたままなのである。<br />
<br />
<br />
<br />
　　□　終わり　□]]>
    </description>
    <category>undiscovered exploit</category>
    <link>http://undiscoveredexp.blog.shinobi.jp/undiscovered%20exploit/%EF%BC%91%EF%BC%95</link>
    <pubDate>Fri, 16 Oct 2009 10:51:48 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>１４</title>
    <description>
    <![CDATA[「ど、どういうことだ」<br />
　すっかり怯えきった顔で説明を求める小松に、天満は事情を話した。<br />
「おんしを穏便に排除すること。全てはそのための計画だったんじゃ」<br />
　やはり、ここ数日小松へと流れてきた情報は統制された偽情報だったのだ。更に盗聴やクラッキングで小松の売買状況を把握し、市場の流れが小松に損を与えるよう操作し続けた。そしてその損の分を吸い上げるようにして、天満も田中たちはかなりの儲けを得られたのだ。<br />
「なんてことを……！」<br />
「例の組の者どもも、おんしに預けた分以上の額を取り戻しておるはずやき、文句は言うてこまい。わしはわしで当分の資金がなんとかなるくらいの金は手に入れた」<br />
「こっちの損はどうするんだ！」<br />
「おんしの懐に溜め込んだ金をあてがえばマイナスにはならんじゃろう。いやぁ、おんしも随分と貯めこんだのう」<br />
　実は小松には隠し口座があることも、その残高までも解っている。<br />
　小松はふらふらとその場に座り込んだ。<br />
「こんなことあんたに出来るわけがないな。誰の入れ知恵だ？」<br />
「……………」<br />
「……橘か？」<br />
　天満は黙って頷いた。<br />
　くそっと小松は舌打ちをして、頭を抱え込んだ。<br />
「そういうつもりで送り込んだんだな……っ」<br />
　しばらくそこで激しい後悔の念に苛まれていた小松は、ふと思い出したように言った。　<br />
「……ヒロキはどうなった」<br />
「橘が山神の術で憑坐から追い出したと聞いた。浄化も見届けたそうだ」<br />
「そんな………」<br />
　これは相当ショックだったらしい。おもむろに眼鏡を外した小松は、背中を丸めてうなだれてしまった。　<br />
「なあ。俺たち、持ちつ持たれつでうまくいってただろ……。何で壊しちまったんだ……」<br />
「何を言うとるんじゃ。おんしはあのヤクザ者どもから相当恨みをかっていたじゃろう。トラブれば諜報班におんしがヤクザもんとつるんでたことも、金を貯めこんでたこともバレとったに決まっちょる」<br />
　わしだってどんな処分を受けていたかわからん、と天満は自分の首を指差した。<br />
「まあ、正直わしもうまくまわっちょると思っていたがな。まずいことはわかっちょったが、これ以外に手段はないんじゃと自分に言い訳しちょった。けどな、橘に言われて気付いた。わしは生活すること、つまり"手段"そのもの流されちょったことにな」<br />
　椅子を持ち出してきて小松の隣に腰掛けた天満は、両の手を組んだ。小松のほうはよく解らないといった顔で聞いている。　<br />
「前線で戦うちょる者どもと、おんしが何故上手くいかんかったか、やっと解った。目的を見据える心の熱さに温度差があったやき、馴染めんかったんじゃろ」<br />
「………言ってる意味がわかんないよ」<br />
　首を振る小松に天満は笑いかける。<br />
「おんしは金を溜め込んで何がしたかったが？」<br />
「何って………」<br />
「どうしても叶えたい目的など、持っちょらんのだろう？そもそも、どうしてこの世に残ったが？」<br />
　実はそのことは天満も聞いたことがなかった。小松はまだ誰にも話したことがなかったのだ。<br />
「その時の気持ちはどうなった。忘れてしもうたがか？」<br />
「……別に俺はこの世に未練なんてないつもりだった。いつも早く死んで楽になりたいと思ってたからな」<br />
「ほう」<br />
　それはつまり自殺したということか。天満が訊くと、<br />
「いや、過労死ってやつだな」<br />
　小松は手にした眼鏡を手持ち無沙汰でいじっている。<br />
「まあ、つまんねー人生だったよ」<br />
　都内の大学を出、証券会社に勤め始めた小松は、バブルの波に押され日々増えていくノルマに肉体も精神も病みきっていった。<br />
「つらいくせに辞める勇気もなかったんだな。毎日死ぬことばかり考えてた。そんである時、疲れて帰って布団に入って、そのまま目が覚めなかったんだ」<br />
　死因は心臓麻痺だったらしい。父親もその父親も昔から心臓が弱かったから、遺伝的なものもあったのかもしれない。<br />
「なんでこの世に残ったのかは解らない」<br />
　というより、死んですぐの頃には死んだことにすら気付いていなかった。<br />
「けど、この身体を手に入れた時は、これは新しい人生をはじめるチャンスだと思ったんだよ。馬鹿な生き方しかできなかった自分がくやしくて、今度は世の中を上手く渡ってやろうと思った。楽に稼いで、いい飯食って、いいとこに住んでさ。何かを思いつめたり、苦しんだりはしたくないって」<br />
　けれど、結局また失敗した。うつむいた小松の眼には光るものが溜まっている。<br />
「………多分、人生って言うのはさ、絶対に満足出来ないようになってるんだよ」<br />
「そがいなことはない」<br />
　顔を上げた小松は、即座に否定した天満の顔をみつめた。<br />
「わしは、不器用な生き方しかできんかったくせに、澄んだ心で死んだ者を知っちょる。同郷の者からひどい仕打ちを受け、志半ばでそれでも未練なく立派に死んだ人も知っちょる」<br />
「……そんなの俺には無理だ」<br />
「諦めるのは簡単じゃ」<br />
　直江が言った言葉を天満は言った。<br />
「でもおんしはまだ終わっちょらん。今からでも、決して遅くはない」<br />
　力強く言った。<br />
「おんしに才能があるのは認めちょる。今回は手段を間違えたんじゃ。まずは目的を見つけるとええ。その後、才能を生かす道を探してみたらええ」<br />
　小松は再び首を振っている。<br />
「どうせこのままでいたところで、浄化もできん。時間だけは限りなくある。ここで諦めたらとことん堕ちていきゆうだけじゃ」<br />
「……なら、あんたはこれからどうするんだ？自分が中途半端だって、気付いたってことだろ。今から前線に出向いて行って、命をかけて戦いでもするのか？」<br />
「目的がなければそがいなことをしちょっても意味がないき。しばらくは、おんしのような浄化をしたいともしたくないとも思わないような者らの居場所を作りたいと思うちょる。それから、今生きちょる人らが、自分のような中途半端な死を遂げないように、忠告できたらとも思うちょる」<br />
「忠告？」<br />
「ほうじゃ。わしらのようにならんために、澄んだ心で死んでゆけるように、手伝うちゃるんじゃ」<br />
「………だからあんた、じーさんばーさんばっか相手にしてるのか」<br />
「あん人らはわしの助けなどいらん人らやき」<br />
　笑った後で、天満は自分に言い聞かせるように言った。<br />
「燃えるような心がなくとも、戦わずにはいられないような衝動がなくとも、生きている限りはあがくことをやめるつもりはあらん。もしかしたらあがくことをやめないことこそが、わしにとっては生きるということなのかもしれんな」<br />
　黙り込んだ小松を横目に見て、天満は立ち上がった。<br />
「橘の言うように、一度死んでいるからこそわかることがあるもんじゃの」<br />
「………橘は生き人だからそんな風に思うんだ」<br />
「いや、あの男はわしらと一緒なのかもしれん」<br />
　椅子を片付けながら小松に背を向けて、最後は呟くように言った。<br />
「あがき続けている男なのかもしれん」]]>
    </description>
    <category>undiscovered exploit</category>
    <link>http://undiscoveredexp.blog.shinobi.jp/undiscovered%20exploit/%EF%BC%91%EF%BC%94</link>
    <pubDate>Fri, 16 Oct 2009 10:50:55 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>１３</title>
    <description>
    <![CDATA[　まるで悪夢のようだった。<br />
「どうすんすか、小松サン」<br />
　何台ものモニターの前で退屈そうにしている若者達が、非難めいた視線をぶつけてくる。<br />
「……くそっ……！」<br />
　まるで得体の知れない怪物を相手にしているようだ。<br />
　いつものように手に入れた情報頼りで動いていたら、急に損が嵩み始めた。多分情報そのものが、どれもおかしいのだ。そうとしか思えない。<br />
  仕方なく、己の裁量で取引を続けてみたら、ますますドツボに嵌った。自信はあったのに。今までいったい何を学んできたのだろうと思う程に、打つ手打つ手が全部裏目に出る。もうどうしていいのかも分からず、今は全ての取引から手を引いている状態だ。<br />
　けれどこのまま何もせずにいたところで損失は埋まらない。<br />
（どうしたらいい……っ）<br />
　とにかくもう一度しっかりとした情報を手に入れるルートを確保しなくてはならない。もっと質のいい、ランクの高い情報を。<br />
　しかし。<br />
「……ヒロキのヤツはいったいどこへ行ったんだ………っ！」<br />
　ここ数日、ヒロキとは連絡が取れていなかった。<br />
　イラつきながらケイタイを取り出すと、リダイヤルを検索する。が、発信ボタンを押す前に、騒々しい物音が入り口のほうから聞こえてきた。<br />
「貴士さん、まずいですよ」<br />
　隣室でいつものように待機していた男ふたりの慌てたような声が聞こえてくる。<br />
「ここかぁ～！？」<br />
　乱暴にドアが開いて、入ってきたのは見覚えのある短茶髪。今まさに電話をかけようとしてた相手、ヒロキだった。<br />
「ヒロキ……っ！お前いったいなにやってたんだっ！」<br />
「あぁ？」<br />
　怒鳴りつける小松にヒロキは不審な目を向ける。<br />
「もしかして、あんたか。俺に催眠術をかけたってヤツは」<br />
「…………あ？」<br />
　小松は気づいてしまった。<br />
　ヒロキの気配がどこにも感じられない。憑依が解かれてしまっている。<br />
「どういうことだ……いったい……」<br />
　ヒロキが勝手にいなくなる事態は想定外だった。小松は放心したまま動けない。　<br />
「ちょっと、顔かしてよ」<br />
　そんな小松に、貴士は何故か笑みを浮かべて言った。<br />
「俺、やられたらやり返すがモットーだからさ。やられたまま黙ってる訳にはいかないんだよ」<br />
　貴士がポケットから光るものを取り出す。<br />
　それはバタフライナイフだった。<br />
　そこで始めて小松は、自分の身に危険が迫っていることに気づいた。<br />
　モニター前で興味深々にやりとりを眺めていた若者達が、次々と部屋から逃げ出して行く。<br />
「あんたにわかる？身体を他人に乗っ取られた感覚。レイプされたみてーで、すっげーきもちわりいの」<br />
「何する気だ」<br />
「さあ、どうしよう。何して欲しい？」<br />
　じりじりと歩み寄ってくる。<br />
「た、貴士さん……」<br />
　貴士の後ろに立つ二人組も、鈍く光るナイフをみて、青くなっている。<br />
　と、そこでまた入り口の方からドアの音がした。<br />
　おろおろしている男ふたりをかき分けるようにして、作業着姿の男が現れる。<br />
「そこまでだ」<br />
　天満が、小松と貴士の間に立ちはだかった。<br />
「何だ、あんた」<br />
「おやっさん……」<br />
　貴士の持つナイフの切っ先が、天満に向けられる。<br />
　しかし天満にそれを恐れる様子は無い。<br />
「こっちが許可を出しゆうまでは、小松には手出しをせん約束じゃあなかったが？」<br />
「そんなもん知らねーよ」<br />
「まあいい。今しがた、この件についてはお開きとした」<br />
「なに？」<br />
「計画完了、おんしんとこの人間と話がついたちゅうことじゃ。さあ、出て行ってもらおうかの」<br />
「んなもん、俺には関係ないね」<br />
　貴士は刃を更に天満の近くへ突き出した。<br />
「あんたの後ろで震えてるそいつを差し出さない限り、引き下がる気はねえよ」<br />
　天満が振り返ると行きたくないとばかりに小松は首を振る。向き直った天満は自らナイフの前へ顔を近付けた。<br />
「ならばこの小っこい刀を田中ちゅう男に向けて交渉するといい」<br />
「………親父さんと話したのか」<br />
「ほうじゃ。全てのことはあん人と話をして決着がついとる」<br />
「……………」<br />
  さすがの貴士も田中には逆らえないようだ。<br />
「行きましょう」<br />
　男たちに促されて、仕方なく貴士は出て行った。<br />
「これで終わりにはしないからな」<br />
　不気味な笑みと、捨てゼリフを残して。]]>
    </description>
    <category>undiscovered exploit</category>
    <link>http://undiscoveredexp.blog.shinobi.jp/undiscovered%20exploit/%EF%BC%91%EF%BC%93</link>
    <pubDate>Fri, 16 Oct 2009 10:50:36 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>１２</title>
    <description>
    <![CDATA[　事がスムーズ（？）に運んだおかげで、直江は思ったよりも早く天満のアジトへと戻って来ることができた。<br />
　空だった後部座席には、必要な機材を一式を積んでいる。取り急ぎ用意したものだから完璧とは言いがたいが、なんとかなるだろう。<br />
　全ての準備は整った。<br />
　後は天満の準備した金次第、のはずだったのだが。<br />
「………これだけか」<br />
　直江の前に差し出されたのは、菓子の空き箱にいれられた、しわくちゃの札や小銭。万札は殆どない。<br />
　金が揃えられなかったのだ。<br />
　期待はしていなかったが、想像以上にひどい。<br />
「え、えらそうになんちやぁ！」<br />
「わしらにとっちゃあ、大金じゃあ！」<br />
　所属の隊士たちがかき集めたものらしい。<br />
「やはりこれではいかんが？」<br />
　天満が心配気に問うてくる。<br />
「……………」<br />
　もちろんこれでは無理だ。ただ直江は、計画に支障をきたすことも問題だが、それ以上に小松のいなくなった後のことが心配になってきた。<br />
　直江が外出している間、時間はそれなりにあったはずなのに。ただ持ち合わせの金を集めることしか思いつかなかったことに、頭を抱えたくなった。<br />
　思わず計画を改めたほうがいいかと考え込む直江の後ろで、カララと引き戸の開く音がした。<br />
「こがな真夜中に、どがいしたんじゃ」<br />
　天満の声に振り返ると、昼間いた老人たちがぞろぞろと部屋へ入ってきた。<br />
　そしてある者は風呂敷に包みを、ある者は封筒を、ある者はビニール袋を無造作に机の上に置く。<br />
「困っちょるそうやか」<br />
「聞いたちや」<br />
　半透明のビニール袋から透けて見えるのは、明らかに現金だ。<br />
「今日はへそくりを持ち寄っただけやき、あした銀行が開いたらもっと持って来れゆうよ」<br />
「もちろんやるとは言うちょらん。無利子で貸すだけじゃあ」<br />
「……………」<br />
　唐突な行動に天満も隊士たちも固まってしまっている。<br />
　しばらくして、天満がやっと、<br />
「誰に聞いちゅうがか？」<br />
　とだけ言った。<br />
　すると、<br />
「わしじゃ」<br />
と入り口のほうから声がした。<br />
　いつも夕飯を一緒に食べる老人のうちのひとりが、海外旅行にでもいけそうなスーツケースをひっぱって現れたのだ。その老人よりも重そうなスーツケースをなんとか引っ張って天満のもとへと持ってきた老人は、躊躇いなくそのスーツケースをあけた。<br />
　すると、中には札束がギュウギュウにつまっている。<br />
「わしはタンス貯金派じゃ」<br />
　さすがの直江も言葉が出なかった。<br />
　ところが天満のほうは、何故か急に怒り出したのだ。<br />
「いかん！こがな事ことはこたわん！」<br />
「いや、わしも土佐の男やき、一度言うたことは譲れん！」<br />
  老人も頑固だから、一歩も引く気配がない。二人の似たような言葉の攻防が延々と続き、周囲がうんざりし始めた頃、見かねた直江が今日はもう遅いから、返事は保留にして明日また来てもらってはどうだと提案し、そういうことになった。<br />
「ありえん！」<br />
　老人達が引き上げた後も、天満はまだ怒ったままだ。<br />
「少し柔軟に考えられないか」<br />
　計画にはどうしても資金が必要なのだから。そう話すと、<br />
「そがな作戦がうまくゆく保障はどこにもない」<br />
と元も子もないことを言ってきた。<br />
　むっとした直江は、<br />
「確かに、保障はない。じゃあ計画は中止か？何か他にいい案があるのか？保障がないからって止めていいのか？」<br />
と、天満を質問攻めにする。<br />
「諦めるのは簡単だ。しかし、このまま小松頼りの生活を続けていて何になる？それこそ、この生活が明日も続けられる保障はどこにもない。もし本気でこの世に残って、生活し、人とかかわることでいつか目的を見つけたいというのなら、人頼みでなく自分の手でこの生活を守ってみてはどうだ」<br />
「そう言われても出来んもんは出来ん。死人の立場では生き人のことに責任など取れんではないか」<br />
　その言い草に、直江の眉は更につりあがった。<br />
「今更生き死にを持ち出すのか？人とかかわり続けたいといったのはあなただ。そこに"生き人""死に人"の区別があったのか？いや、逆に一度死んでいるからこそ、生き人の助けになれることがあったはずだ」<br />
　もちろん同じ経験をしたことのある死に人の立場にだって一緒に立てる。<br />
「もし本気で何かを見つけたいのなら、外から眺めているだけでは駄目だ。流れる川をみているだけでは自分自身は留まったままだ。飛び込まなきゃどこにも進むことはない」<br />
　心動かされるものから離れていては駄目だと直江は知っている。部外者でいては駄目だ。少しでも傍に歩みより、流れをともにしてこそ、己の真実に近づくことが出来る。<br />
「人と関わりあいたいと思うのなら、人の輪の中に入り、自らも人でいなくては駄目だ」<br />
　直江のその実感を込めた言葉が少しは伝わったのだろうか。天満の顔つきが若干変わった。<br />
「……わかった」<br />
　覚悟が決まったようだ。<br />
「皆と心中する覚悟でやっちゃる。作戦を教えてくれ」<br />
<br />
<br />
　小松の事務所にあった、何台もモニターの並ぶような立派なものではないが、似たようなものを天満の事務机の上にセッティングしながら、これからの計画を天満に話して聞かせた。<br />
　天満はメモを書きながら聞いている。<br />
　その他の打ち合わせも全て終えたところで、ケイタイを取り出して天満に渡した。<br />
「東京にいた頃の知り合いから指示がくることになっている。彼の言うとおりにしていれば間違いないはずだ」<br />
　あとは天満のタイミングで計画を終わらせてくれればいい。つまり、小松が改心するタイミングということだ。後の小松の処分に関しても、全て天満に任せることにした。追放するなり、本部に突き出すなり、好きにすればいい。<br />
　宮本に言われていたリストの品物を車へと積み込み、直江はやっと帰途につくこととなった。<br />
　差し出された天満の手を握り返し、別れの握手を交わす。<br />
「なんだか世話になってしもうたのう。宮本にはちゃんと上手いこと言っておいたき、きっと労うてくれるはずじゃ」<br />
　その"上手いこと"が多少心配ではあったが、全ての段取りを終えた達成感のおかげで直江は気分がよかった。<br />
「それじゃあ」<br />
　天満のアジトを後にして途中休みつつ車を飛ばし、日吉砦に着いた頃にはもう完全に明るかった。<br />
　砦の前に車をつけると、早速宮本が飛び出してきた。<br />
「いやーすまんかったの。疲れちょるじゃろ。ささ、風呂にでも入るとええ。いやぁ、大変じゃったらしいのう！畑を手伝わされて、筋肉痛とか。全く動けんと聞いちょったが、もう随分平気そうじゃの。現代にはええクスリがあるき、つけちょったらええ」<br />
　宮本はわざわざ筋肉痛用の塗り薬を手渡してくれた。<br />
　わしもこの身体に入っばかりの頃はな、といちおう現代人の直江相手に宮本の憑坐講義が始まる。<br />
　もうちょっとマシな言い訳はなかったのだろうか。<br />
　直江は心の中で天満に訴えた。]]>
    </description>
    <category>undiscovered exploit</category>
    <link>http://undiscoveredexp.blog.shinobi.jp/undiscovered%20exploit/%EF%BC%91%EF%BC%92</link>
    <pubDate>Fri, 09 Oct 2009 11:14:33 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>１１</title>
    <description>
    <![CDATA[　今のままでは説得を受け入れないであろう小松には、作戦立てて説得を試みることにした。同時に暴力団とのトラブルの収拾、今後の赤鯨衆の資金対策までやってしまうつもりだ。<br />
　幸いこちらの動きが小松に知れる心配はないから、しばらくは内密に進められる。問題はどうしても必要になる小松側の情報をどれだけ入手できるかにかかっている。<br />
　小松がどの銘柄で取引しているのか、それから小松に情報を流している情報筋、小松が資金運用を任されている暴力団の割り出しは特に必須だ。<br />
　けれどこれらを自分ひとりで突き止めるのはとてもじゃないけど無理だ。本当ならもう、日吉砦に戻っていなくてはならないのだ。天満がごまかしの連絡を入れてくれてはあるが、直江としては出来る限り怪しまれるような行動は避けたいのだ。赤鯨衆の中枢に最短で近づくために。<br />
　仕方なく、直江はある男と連絡をとることにした。<br />
　"黒ちゃん"こと情報屋の黒木である。<br />
　詳しい事情は伏せたまま、知りたいことだけを簡潔に話すと、人探しより余程やりやすいと喜んで協力してくれた。そしてものの十数分で、小松が資金を扱っている暴力団の身元を、割り出してくれたのである。<br />
<br />
<br />
「いっ、痛ぇっ！」<br />
　襖の間から突き飛ばされるようにして入ってきたのは、昼間小松にヒロキと呼ばれていた若者だった。勢いあまって畳の上に倒れこむ。<br />
　そこは勇栄建設という株式会社の持ちビルで、とある暴力団の事務所本部として使われている場所だった。三階の畳敷きの大広間は、今は照明がわずかしか点いておらず、真っ暗に近い。<br />
「俺は貴士だぞ！先代の息子だぞ！こんなことが田中の親父さんに知れたらどうなるかわかってんのかよっ」<br />
　"貴士"とはヒロシの憑依する宿体の名だ。先代の忘れ形見である貴士の事を知らない組関係者はいない。<br />
「心配はいらん。その親父からの命令やからな」<br />
　関西のものに近いイントネーションで、男の声がした。<br />
　暗い部屋で、どこに男がいるのかがわからず、ヒロキはきょろきょろと周囲を見回す。<br />
「す、須田さんっすかっ？ど、どこっすかっ」<br />
　組の幹部である須田は、現組長の田中とともに小さい頃から貴士を非常に可愛がってくれている人物、だそうだ。もちろんヒロキにその記憶があるわけではない。人から聞いた話だ。<br />
「なんでこんなことするんですかぁ～？どういうことですかぁ～」<br />
　困りきった声で、甘えるように言った。きっとこれで助けてもらえる。<br />
「それはこちらが教えてもらいたいなあ、"ヒロキ"くん」<br />
「へ………っ？」<br />
　"ヒロキ"の名を、何故須田が知っているのか。<br />
　ぱっと明かりが点いて、呆けたヒロキの顔が明るく照らされた。<br />
　部屋の上手側に須田と、随分背の高い男が立っている。その後ろには幹部連中に囲まれて、組長の田中が座っていた。<br />
「な、なんで……」<br />
「催眠術だかなんだか知らんが、別人にさせられたんゆうんはほんまらしいなあ。しかし術を解いてくれるゆうお方がみつかったんや。もう心配ないで、貴士くん」<br />
　須田がそう言うと、隣にいた背の高い男が歩み出てきた。<br />
「あんた……」<br />
　よく見ると、昼間小松と一緒に喫茶店にいた男だ。その事が判り、ヒロキは安堵の表情を浮かべた。小松からは、この男が小松の所属する「セキゲイシュウ」の人間だと聞かされていた。ヒロキは、自分が「セキゲイシュウ」の為に働いているんだと小松から聞かされている。そしていつか「セキゲイシュウ」の正式メンバーにしてもらうこと。それが小松との約束だった。<br />
　だから、目の前の男はどちらかといえば味方側の人間だ。ヒロキを庇いこそすれ、攻撃するはずがない。<br />
　男はおもむろに手を合わせると指を複雑に絡め始めた。<br />
　その妙な動きを不審そうに、けれどもまだ余裕の表情でみつめていたヒロキの表情が、次の瞬間、凍りつく。<br />
「バイっ！」<br />
　ビシィっと身体中の筋肉が妙な音を立てて強張り、急に身体が動かせなくなった。<br />
「………ひぃぃっ！！」<br />
　あわててパニック状態になる。<br />
「な、なんなんだこれぇ………っ！！」<br />
　身体のどんな場所に力をいれても動かない。最終的には憑依を解いて憑坐から抜け出そうと試みたが、それすら無理だった。<br />
「のうまくさんまんだぼだなん………」<br />
　よく響く低い声が部屋に充満する。<br />
「まっ！まってくれ……！！」<br />
　よくない事が起こる予感がした。得体の知れない恐怖がヒロキを襲う。<br />
「南無刀八毘沙門天、悪鬼征伐、我に御力与え給え……！」<br />
「ひっいいいい！！」<br />
　目を開けていられないほどの眩しい光が男の手に急激に集まった。そして<span class="line">───</span>。<br />
「《調伏》！」<br />
「ぎゃあああぁぁぁ！！」<br />
　身体がどこかへ引っ張られるような感覚がして、そこでヒロキの意識は完全に途絶えた。<br />
<br />
<br />
　大量の光を受けて倒れこんだ貴士の身体は、気を失ったまま動かない。<br />
「しばらくすれば目を覚ます」<br />
　全ての光が収束するのを待って、直江は言った。<br />
「い……今のんは、ほんまに催眠術か……？」<br />
　あまりにも不自然な現象に、さすがの男達も強面の顔が引き攣っている。<br />
「似たようなものだ」<br />
　直江は素っ気無く言うと、一応の確認の為に貴士の傍へ行って跪き、脈に触れた。<br />
「いったい何が目的なんや」<br />
　問う須田の声も若干上擦っている。<br />
「さっきも言っただろう」<br />
　貴士の身体に異常がないことを確認し、立ちあがった直江は男達を見回した。<br />
「小松に恨みがあって陥れたいんだ。約束通り、催眠術は解いた。しばらくは言うとおりにしていてもらう」<br />
　ひたすらに冷静な直江を、男達は睨みつける。<br />
「恨みつらみだけでここまでせえへんやろ？金のためちゃうか？」<br />
「まあ、それもある」<br />
「………それもある？何や、その言い方は」<br />
　明らかに答えをはぐらかしたことで、不信感を抱かせてしまったようだ。<br />
　なんだか急に不穏な空気が漂い始めた。<br />
「さっきの話でいくと、こっちには全く損がないやないかぁ」<br />
　そんなのは当たり前だ。気持ちよく了承してもらう為に、わざわざそのように計画したのだから。　<br />
「ウマい話には必ず裏があるってゆうやんか。信用でけへんわぁ」<br />
　今更になってそんなことを言い出した須田に、直江の冷たい視線が刺さる。<br />
「約束は反故にすると？」<br />
「それやったら、どうする？」<br />
　須田のその言葉で、室内に緊張が走る。<br />
　と、<br />
<br />
　　ビシィッッ<br />
<br />
　奇妙な音とともに、部屋の中を稲妻のようなものが走った。<br />
　息を呑んだ男達の前で、須田の頬に血の筋が出来た。<br />
「な、何や、今のんは……」<br />
　直江は無表情のままで、自分がやったとも言わない。その現象がどういうものなのかの説明もない。<br />
　それが逆に恐ろしかった。<br />
「もうええ」<br />
　皆が黙り込む中、一番に沈黙を破ったのは組長の田中だった。<br />
「値切り交渉は好きやけどな、一度決まったもんを覆すんはみっともないやろ」<br />
　ボディーガード風の若い衆を押しのけて、直江の前までやってきた。<br />
「しかし今のんは、明らかに催眠術やないな。あのセキゲイシュウちゅう連中も妙なチカラを使うてた。それはいったい何なんや」<br />
　こうやって探りを入れてくるあたり、さすが組のトップだけあってしたたかだ。<br />
「知らないほうがいい」<br />
　直江はそれだけを言って、部屋を後にした。]]>
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    <link>http://undiscoveredexp.blog.shinobi.jp/undiscovered%20exploit/%EF%BC%91%EF%BC%91</link>
    <pubDate>Fri, 09 Oct 2009 11:14:11 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>１０</title>
    <description>
    <![CDATA[　直江は驚きを隠せなかった。<br />
　死してもなお残る情熱がこの世に留まらせている訳ではなく、死んだ後に見つけてしまった目的のために生きている。どこかで聞いたような話だ。<br />
　しかし相手は換生者ではなく、憑依霊だ。<br />
　昼間、天満自身が戦は手段であると言ったように、霊にとって憑依し生活するということは、目的のための手段であるはずなのだ。通常、死に際の想いが弱くなれば、自然と力は薄れ、憑依は解かれ、浄化へ向かうはずだ。<br />
　手段が他の目的を生む？目的を探してこの世に残っている？<br />
　どうなっているというんだ。<br />
（許せるはずが無い）<br />
　こんな状況を何故あのひとは許しているのか。<br />
　それとも、知ってしまったからこそ放って置けなくなっているのか……。<br />
　そう高耶なら、自分に似たこの人間達を放ってはおけない。<br />
　こう考えるかもしれない。<br />
　赤鯨衆は"何かのきっかけでこの世に残ってしまった霊"が、新たに目的を得、達成し、浄化するための場所だと。<br />
　《調伏》行為に罪の意識を抱き続けた彼が、新たな《調伏》方法として赤鯨衆を受け入れてしまったとしたら……。<br />
　しかしそれはあまりにも安易すぎる。<br />
　もしこんなことを霊たちが皆、口にしだしたら。<br />
　どれだけの憑巫が犠牲になる？自分達が400年で犠牲にしてきた宿体や憑坐の数の何十倍？何百倍？<br />
　今すぐ高耶の元へ行って問いただしい気分だ。何をしているんだと。何を考えているんだと。<br />
　そうなのだ。<br />
　今の自分に必要なのは正義か悪かではない。<br />
　自分に言い聞かせるようにして、余計な考えを振り払った。<br />
　とにかく今は、早く、速く高耶の元へたどり着くことを考えなければ。直江のしたことで結果赤鯨衆が潰れたとして、そのどさくさに紛れてまた居場所がわからなくなりでもしたら困る。高耶を刺激するようなことだけは避けなければならない。　<br />
　それだけだ。<br />
　考え込んでいた直江が顔をあげたので、天満も改めて向き直った。<br />
「小松に聞いてきたこと、全てを話す」<br />
　宣言するように告げた直江に、天満は深く頷いた。<br />
　<br />
<br />
　ふたりは施設内へもどって来ていた。<br />
　天満の手には小松からの手紙がある。<br />
　直江は小松についてわかったことを全て話した。<br />
「ほうか……キケンか……」<br />
　株式のくだりについてはあまり理解していないようだったが、ヤクザとトラブっているってことだけはわかったようだ。<br />
　が、聞いたところでどうしていいのかもわからない顔だ。<br />
「どがいしたらええ。何かいい案はないかね？」<br />
「揉める前に、小松本人に謝らせて手を引かせるしかない。下手な手段に出て本格的なトラブルに発展すれば、小松だけの問題じゃ済まなくなる。金を追ってこっちにまで押しかけて来るだろう。そうなったら厄介だ」<br />
「……小松も、悪いヤツじゃあないんやきのう。手間のかかる……」<br />
　天満が困りきったように言った。<br />
「しかし小松が稼げんようになっちょったら、これからの収入はどうするがか？」<br />
「先のことは後で考えよう。問題は小松にどうやって手を引かせるかだ。あなたの説得に応じるとは思えない」<br />
　もちろん直江の説得など論外だろう。手っ取り早く手を引かせる方法はないものか。<br />
「んなもんありゃあせん……」<br />
　しかし直江は言う。　<br />
「無い訳ではない」<br />
　俯いていた天満が顔を上げた。<br />
　策はある。だが簡単にはいかない。時間も足りないし、人手の当てもない。<br />
「とにかく金がいる。集めておいてくれ」<br />
　直江は覚悟を決めて立ち上がった。]]>
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    <category>undiscovered exploit</category>
    <link>http://undiscoveredexp.blog.shinobi.jp/undiscovered%20exploit/%EF%BC%91%EF%BC%90</link>
    <pubDate>Sat, 03 Oct 2009 05:15:27 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>０９</title>
    <description>
    <![CDATA[　天満のいるアジトへ戻った頃には、既に陽が傾き始めていた。<br />
　施設内に入ると、昼間は外にいた隊士達も室内に戻り、読書やカードゲームなど思い思いに過ごしている。誰かが夕飯を作っているらしく、いい匂いがした。<br />
　パートタイムの女性陣や子供達はもうとっく帰ったようだったが、老人達が数名、まだ残って話し込んでいた。独身の老人達ばかりで、ここで夕飯を摂ってから家に帰るのだという。<br />
　その老人達の奥に、天満はいた。机に座り、事務仕事をしていた。<br />
「おう、すまんかったのう。リストのものは全て準備できちょるき、持ってくとええ」<br />
　そう言った後で、周りに聞こえぬよう、小声で言った。<br />
「小松はどうじゃった？」<br />
　直江は小さく頷くと、<br />
「外で話そう」<br />
　と、天満を外へと連れ出した。<br />
<br />
<br />
　外気が、急激に冷え込み始めていた。<br />
　例の畑の手前のあたりまで歩いてから立ち止まった直江に、天満はもう一度、どうじゃった、と訊いてきた。<br />
　しばらく答えずにいた直江は、天満に向き直ると、ゆっくりと口を開いた。<br />
「その前に、ひとつ訊いておきたい。あなたが何故、現世に残ったのか」<br />
　全く別の話を始めた直江に対して、天満は眉を上げただけだった。黙って聞くつもりのようだ。<br />
「赤鯨衆というものは、同じ目的のために集まった人々というよりは、各々が各々の目的の達成を目指して集団行動を取っている、ということは今日一日で理解したつもりだ。もちろん大半が虐げられた怒りや恨みで戦っているのだとは思う。しかし小松は違った。ここにいる他の隊士達も違うんだろう」<br />
　これは《闇戦国》の中での新しい形といえた。<br />
　怨将の元に集まるのではなく、個人が個人であるための集団。家名も、大義名分も、ここでは不要なのだ。<br />
「ならばあなたはどうなんだ？あなたはいったい何の理由があって、ここでこんな生活をしているんだ？」<br />
　人の魂は輪廻転生を繰り返すもの。換生者の自分が言うのもおかしいが、それが世界の理だ。<br />
　転生に逆らうのなら、それなりの理由がなければならない（理由があるからといって許されるわけではないが）。それを知りたかった。天満の理由を知ることは、赤鯨衆に対する理解を深めることのように思えた。<br />
「神官というのは寺坊主のようなことを言うがか」<br />
　黙って訊いていた天満は、静かにそう言った。<br />
　そして、まだわずかだけ山の裾に顔を見せている夕陽に体を向けた。<br />
「私は土佐勤王党の一員じゃった」<br />
「勤王党……」<br />
「ほうじゃ」<br />
　勤王党のメンバーが多くいることは聞いていた。尊王攘夷の嵐の波間に砕け散った土佐の志士達。不意にあの幕末の頃の空気が蘇る。独特の匂いのする時代だった。景虎との長い離別の末、再会した頃でもある。<br />
「君が為 尽くす心は 水の泡 消えにし後ぞ 澄み渡るべき」<br />
　天満が突然、詠み上げた。<br />
「おんしは、この句をどう解釈する？」<br />
　それは、直江にも聞き覚えがあった。幕末に人斬りとして名を馳せた岡田以蔵という人物の、辞世の句だ。直江に面識がある訳ではない。しかし後に文献や小説などで目にする機会があった。<br />
　覚えている限りの解釈では、"君"というのは勤王党の首である武市のことを指すというものもあれば、天皇をいうのだというものもあったはずだ。"澄み渡ったもの"が何であったのか、そこも諸説あるだろう。<br />
　だが、直江の目で見るならば。<br />
「彼は執着を捨てて、自由になったということだろう」<br />
　直江のように、水の泡にこそ拘り続けている人間からすれば、正反対の心情だ。<br />
　天満は大きく頷いた。　<br />
「ほうじゃ」<br />
　刻々と暗くなっていく空のせいで、天満がどんな表情をしているのか、読み取れない。<br />
「岡田の心は澄み渡った。だからすんなりと逝けたがじゃ。比べてわしは、澄み渡るなんちゅう心境とは程遠いところで死んでしもうた」<br />
　天満は顔を見せないままだ。<br />
「わしは病死じゃった」<br />
　声の調子は怖いくらいに変わらない。<br />
「何とも煮え切らん最期じゃった。野根山にも参加出来んかったがじゃ」<br />
　野根山とは、勤王党の弾圧が進み武市が投獄された後、23人の志士達が野根山で挙兵した事件のことだ。<br />
「理由はたぶん、そのことじゃ。わしは、潔く死にたかったんちや。澄んだ心で死にたかったんちや」<br />
　やっと、天満が振り向いた。<br />
「実はな、わしの身分も本来なら岡田と同じ足軽じゃった。しかし親の代でなけなしの金をはたいて"郷士"を買うたんじゃ。実は武市さんにくっついて、かの士学館に出入りさせてもらっちょったこともある」<br />
　士学館とは土佐にあった剣術の道場のことだ。<br />
「岡田とも親しかったのか？」<br />
「親しいちゅう程ではなかったがのう。家も近かったし、わしはよく思っていたきに、話はしちょったよ。ただ岡田はあれだけの働きをしておりながら、党内であまりいい評価は受けちょらんかった。岡田ちゅう男はな、そりゃあ賢くは無かったが………、わしは死んでもええ人間ちゅうのはおらんと思うちょるからのう」<br />
　勤王党の仲間達が次々と捕まる中、やはり同じく捕らえられた以蔵の獄中生活には、ある曰くがある。<br />
　以蔵の自白を恐れた仲間が以蔵を毒殺しようとし、その裏切りを知った以蔵は拷問に耐える事を止めて自白を決意した、というものだ。<br />
　もちろん、真相ははっきりとはしていない。<br />
　毒殺の話自体も、武市が命令を下したとか、獄外の仲間内で持ち上がった計画だったとか、服毒自殺した党員がいたことからのデマだったという話もある。<br />
「わしも本当のところはわからん。しかし、武市さんは岡田を蔑んじょった。他の者もほうじゃ。岡田は岡田でそのことに気づいちょったと思う。牢に入れられ、獄死者が出るほどのひどい拷問を受け、それでも嫌われちょる人間のために口を割らずにいられるもんなんちゃああらせん」<br />
　以蔵は結局、斬首刑となり晒し首の扱いを受けた。その以蔵の自白が決定的となり、武市も切腹を命ぜられて息絶えている。<br />
「武市さんは本当にすばらしい方じゃった。そのすばらしい方でも岡田の心を掴めんかっために命を落としたと言っていい」<br />
　天満の顔が皺の多い笑顔を刻んだ。<br />
「人の世は本当に面白い。生きちゅう頃はこんな風に考えもできんかった。ただ自分のことばかりじゃった。しかし赤鯨衆で色んな人間と出会い、わしはいつまでも人の心を見ていたいと思うようになった」<br />
　冷たい風が二人の間を吹き抜けて、天満は作業着の襟をかき合わせた。<br />
「確かに草間さんや嘉田さんのように己の目的がはっきりしちょるひとらはみていて気持ちがええ。しかしここにおる死に切れんかった理由もはっきりせん連中が、目的を持ち始める様子を見ちゅうのもまたええ。いつかわしも自分の目的をみつけて澄んだ心で逝く時が来るんじゃないんかと想像しちょったりしてな」<br />
　天満は天を仰いだ。<br />
「もちろん永遠にこのままではおられんことはわかっちょる。けれど今はどうしても潔い死に様より、この人の世におり続けることのほうがええと思われて仕方がないんちや。やきに、今は自分の心を知りゆう時間じゃと思うことにしちょる。赤鯨衆ちゅう場がある限り、わしはそうしておってええんじゃと思っちょる」]]>
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    <link>http://undiscoveredexp.blog.shinobi.jp/undiscovered%20exploit/%EF%BC%90%EF%BC%99</link>
    <pubDate>Sat, 03 Oct 2009 05:15:07 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>０８</title>
    <description>
    <![CDATA[　話がひと段落すると、小松はやっと天満からの手紙に眼を通し始めた。<br />
　そして読み終わった手紙の裏に返事らしきものを書き、またもとの封筒に戻して直江に差し出した。<br />
「これ、渡してくれ」<br />
　受け取った手紙を直江がしまっていると、ちょうど店内へ入ってきた若者がこちらへ近づいてきた。<br />
「小松さん」<br />
　色の抜けた短い髪に着崩したスーツ姿でチンピラ風の憑依霊だ。天満は小松が単独で動いていると言っていたが、仲間がいたのだろうか。<br />
「おお、ヒロキ。調子はどうだ」<br />
　親しいらしい小松は手をあげると、<br />
「今行くから外で待っててくれ」<br />
と言って立ち上がる。<br />
　若者は言われるがまま入り口へとＵターンして、店を出て行った。<br />
「赤鯨衆の人間か？」<br />
　会計へと向かいながら小松に訊く。<br />
「いや、あいつは町でひろった現代霊だ。……あの宿体、誰だと思う？」<br />
　意味深に問い返されるが知る訳もない。首を振ると、<br />
「今、カネを稼いでやってる組の、先代の息子だよ」<br />
と、得意気な答えが返ってきた。<br />
「最初は取り入るツテに使うだけのつもりでヒロキに憑いてもらったんだけど、"お坊ちゃんは催眠術で俺の言うことだけを聞くようにしてある"って言ったら、ヤツら信じ込んじゃってさ。都合がいいからそのままにしてる。報酬の交渉なんかでヤツらが渋る時は、この話を持ち出せば一発なんだ」<br />
　つまり人質ということだ。<br />
「そんな強引なやり方では危険じゃないか？」<br />
「まあな。けど、おかげでホントに楽に仕事ができるんだ」<br />
　小松は笑ったが、直江は笑わえなかった。トラブルの元を自分で作っているようなものだ。<br />
　店の外に出て、小松とはそこで別れることになった。<br />
「じゃあ、天満のおやっさんによろしく」<br />
　小松はそう言うと、ヒロキという若者を連れて事務所へと戻って行った。<br />
　それを見送った直江も、後は天満の元へと帰るだけだ。<br />
　しかし思うところがあって、隣に建つビルの影に身を潜めた。<br />
　そして案の定、怪しい男がひとり店から出てきた。実は自分達より少し遅れて入店し、直江の背後の席に座った男がいたのだ。<br />
　歩き始めた男の後を気付かれぬよう尾けていくと、小松の事務所の様子が伺える格好の場所に黒塗りの車が停められており、男はそれに乗り込んで、そのまま発進する気配はない。<br />
　事務所内にいたふたりの仲間なのか、それとも全く別の団体の人間なのかは解らないが、小松をマークしているのだろう。先程の会話も全て聞かれていたに違いない。どういった事態に陥っているのかまではわからないが、直江の眼には一触即発といった雰囲気にみえる。じきに大きなトラブルに発展するのは間違いない。<br />
（さて、どうするか）<br />
　ありのままを天満に報告するのか？<br />
　これはただ小松の憑坐が危険に晒されるとかそういう問題だけでは済まない。小松の稼ぎがなくなれば、赤鯨衆の収入が一気に減るということだ。<br />
（放っておいてもいい）<br />
　赤鯨衆の資金が底尽きれば、まず憑依霊たちは憑坐を手放さねばならないだろう。霊体でいる限りは金がかからずに済むからだ。<br />
　しかし、肉体を失うことに抵抗する者が必ず出てくる。中にはそれを理由に敵方に寝返る者もいるだろう。一気に戦況は悪化する。<br />
　赤鯨衆が自滅してくれるなら、それはそれでいい。<br />
　いい気味だ、と思う。<br />
　直江の中には、独占欲に似たわだかまりがずっとあった。<br />
　さっさと潰れてしまえばいい。自分の知らない高耶を知る者達など。出来ることなら全員を調伏して亡きものにしてしまいたい。<br />
　だいたい高耶も自分の元を離れてなぜこんな人間達と一緒に居るのか。意味が分からない。自分を捨ててまで共にいる価値のある人間達だというのか。<br />
　気がつくと、赤鯨衆のアラを必死に探す自分がいた。馬鹿馬鹿しいと自分でも解っている。ここまできて、自尊心を守るのに必死なのかと、もう漏れる笑いも無い。<br />
　そう、もうここまで来ているのだ。<br />
　すぐそこに高耶がいるというのに。もどかしくてしょうがない。こんなことをしている場合ではないのだ。<br />
　地道に一歩一歩上ってきた山の頂上が、もうすぐ目の前にある気分だ。一気に駆け上がってしまいたい衝動に駆られる。<br />
　けれど、同時に不安も覚える。足を踏み外して転げ落ちやしないか。いざ頂上についてみたら、そこは頂上ではなくまだ山の中腹だったとしたら。<br />
（……………）<br />
　独りになるといつもこうだ。不毛だとわかっているのに考えてしまう。もっと理知的に考えなくては。それこそ時間の無駄だ。<br />
　頭を振って要点を整理する。<br />
　今回新たに手にした赤鯨衆の情報はどんなものだったか。様々な面があった。強い部分もあれば脆い部分もある。持てる頭脳を総動員して、これから自分が取るべき行動を決めなくてはいけない。<br />
　選択肢は二つ。<br />
　今すぐ脆さを突くか、弱みとして握っておくか。<br />
　直江は迷っていた。<br />
　どちらがベストな選択か……。<br />
　決断するのに、天満の存在がネックになっていると思った。<br />
　直江にはあの男が理解し難い。<br />
　憑依霊とはそもそも、何かしらの目的があるはずなのだ。だからその目的を達成する為に、社会活動を行い、人とも関わりを持つ。<br />
　けれど天満の目的が直江には読み取れなかった。社会奉仕？利他主義？<br />
　小松のほうがまだわかりやすい。<br />
　理解もせずに潰してしまうのは、何か違うような気がした。<br />
　だからもう一度、彼と話してから決めようと思った。]]>
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    <category>undiscovered exploit</category>
    <link>http://undiscoveredexp.blog.shinobi.jp/undiscovered%20exploit/%EF%BC%90%EF%BC%98</link>
    <pubDate>Sat, 03 Oct 2009 05:14:50 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">undiscoveredexp.blog.shinobi.jp://entry/8</guid>
  </item>
    <item>
    <title>０７</title>
    <description>
    <![CDATA[　小松の手元を見つめながら、直江が尋ねる。<br />
「株式投資で稼いでいるんだな」<br />
　先程少し見えたあの隣の部屋が一体どんなものなのかは、なんとなく解っていた。いわゆるデイトレーディングといったような、短期の株式売買を重ねて利益を得る場合に必要な設備だ。<br />
「デイトレっていうよりスイトレってところなんだけどね。もともと赤鯨衆はヤクザのシノギを奪うことで主に資金源としてきてた。合法的に稼ぐことにも挑戦したみたいだけど、殆どうまくいってなかったね」<br />
　調達部は大まかに三つの班に別れているのだそうだ。物資の調達、運搬を主に行う隊。合法的に資金を稼ぐ隊。そして非合法の手段で資金を稼ぐ隊。天満の隊はこれにあたる。<br />
「おやっさんのところに来てから色々資料なんかを漁ってたらさ、合法隊が株式の口座を持ってることが分かったんだよ。でも安定株なんかを持ってるだけで、全く活用できていなかった。だからうちの隊で引き継いだんだ」<br />
　それでいまや赤鯨衆の資金の殆どを稼ぐまでになったというのだ。小松には相当の才能があるのではないのか。<br />
「そんなんじゃなくってさ、株で安定した収入を得ようと思ったら何よりも資金力。いまや個人投資家が儲けようと思ったところで厳しいってことは市場の流れを見てれば解ったし、特別な情報を手に入れる手段も俺は知ってたから」<br />
「特別な情報？」<br />
「そう。安っぽく言えば裏情報」<br />
　仕手筋や投資顧問といった人々が作る人工的な流れは間違いなく存在する。問題はその情報をどの段階で手にすることができるか、だそうだ。<br />
「で、ヤクザに取り入ることにした訳」<br />
　最近のヤクザも、楽には稼げなくなっている。そこへ赤鯨衆が現れてシノギを根こそぎ奪っていったせいで、壊滅寸前まで追い込まれていた団体もあったそうだ。<br />
「そこにつけ込んで取り入ったら、うまくいったんだよね。今はある組の幹部連中の資金をまとめて運用してる」<br />
　小松は外していた眼鏡を掛けなおした。<br />
「動かす額が半端ないから、ほんのわずかな変動でものすごく損もするしものすごく儲けられる。まじめに働くのが馬鹿みたいに思えるよ」<br />
　しかも"裏情報"をかなり早い段階で耳に出来る。彼らの情報網に間違いはないそうだ。<br />
「誰もヤクザを騙そうなんて思わないしね」<br />
　だからこそ、一歩間違えればトラブルに巻き込まれかねない。所詮カタギではない訳だし、やっていることもインサイダーと変わりがない。<br />
　今は元手が充分にあるのだから、危険なことからは手を引いたほうがいいのではないだろうか。直江は、ただ単に情報を集めるだけならば、もっと他にいい手段を知っていた。<br />
「諜報班を使えばいい」<br />
　赤鯨衆の諜報班は、かなり使える者たちだと直江はみている。一蔵からの情報だけでなく、自分の目で確認した機密管理の手順などから、そう判断した。<br />
　しかも傀儡子という単独のエージェントが全国規模で展開しているというではないか。彼らを使えばきっと、もっと確実で危険の少ない情報が手に入るのではないか？<br />
「あいつらは戦争のことばっか。金がどれだけ重要なのかわかってないんだよ。馬鹿だよな。この世では金がさえあれば、身分なんて関係なく勝つことが出来るのに」<br />
「……………」<br />
　その話の内容はともかく、直江は天満と話していた時と同じような違和感を抱いた。死霊の癖に、何に恨みがあるだとか生前はこうだったといった話がまったく出てこない。<br />
　不思議な気分だった。今も生きている普通の人間と話しているようだ。<br />
　だから余計に死因に興味が沸いた。<br />
「何故お前はこの世に残ったんだ？」<br />
　小松はすぐには答えなかった。<br />
「何でそんなとが聞きたいんだよ」<br />
「興味がある。自分もいつか経験することだ」<br />
　小松は視線を彷徨わせながら、苦々しく言った。<br />
「さあな。残ろうと思って残った訳じゃない」<br />
　それが本心なのか誤魔化しなのか、直江には判別出来なかった。<br />
「最近のことか」<br />
「……死んでからはもう10年近く経つ」<br />
「10年」<br />
「そう」<br />
　眼鏡の奥の瞳が不思議な色を湛えていた。<br />
「バブルと一緒に、オレの命もはじけたのさ」]]>
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    <category>undiscovered exploit</category>
    <link>http://undiscoveredexp.blog.shinobi.jp/undiscovered%20exploit/%EF%BC%90%EF%BC%97</link>
    <pubDate>Fri, 25 Sep 2009 11:54:41 GMT</pubDate>
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    <title>０６</title>
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    <![CDATA[　店内に入り案内に従って席につきコーヒーを頼んだところで、ようやく直江は天満からの封筒を小松に手渡すことができた。<br />
　ところが小松はそれをテーブルに置いて、開けようともしない。<br />
「返事を貰うよう言われている」<br />
　と催促してみると、全然別の答えが返ってきた。<br />
「アンタ、訛りがないな。どこの生まれだ」<br />
「……………」<br />
　やはり街に出ている隊士たちは、鋭い。砦にいる者たちとは少し違う緊張感がある。<br />
　本日二度目の質問に、直江は慌てることなく応えることが出来た。<br />
「長いこと東京で働いていたからだろう」<br />
「へえ、何をしてたんだ？」<br />
「不動産関係だ」<br />
　それを聞いた小松は明らかに気色ばんだ。<br />
「投機なんかにも詳しいか」<br />
「……多少ならな」<br />
　小松は急に親しげになって話を進めていく。<br />
「不動産投資に興味を持ってる知り合いがいるんだ。興味ないか」<br />
　そしてここが一番重要だというように、声を低くして言った。<br />
「稼げるぞ」<br />
　資産運用やマネジメント業にも熱心な照弘のお陰で、金融商品、不動産系の投資信託には多少の心得はあった。<br />
　だがもう数年前の知識だから、勘を取り戻すのには時間がかかるだろう。<br />
　しかし敢えてそこには触れずに話を続けることにした。何とか小松自身の情報を引き出したい。<br />
「それは赤鯨衆の活動の一環として言っているのか？」<br />
「いや、個人的なものだ」<br />
　悪びれもせずにそう言う。あきれてしまった。<br />
「個人で金を稼いでいるのか」<br />
　元金が赤鯨衆のものだとしたら、立派な横領ではないだろうか。<br />
「カタいこと言うなよ。おやっさんたちには充分な額を渡してる。残ったものをどうしようが俺の勝手だろ」<br />
　ここにも赤鯨衆のユルさが現れているな、と思った。<br />
「俺がマワしてるカネはさ、赤鯨衆のカネだけじゃあないんだよ。あるツテがあってさ、そいつらのシノギも任されてるワケ」<br />
　先程事務所にいたのは、そのツテ関係の男たちなのだろう。まさかそっちからも横領しているのだろうか。だとしたらもう、赤鯨衆の活動の域を超えている。単なる個人的な、しかも違法な金儲けだ。それとも、その金儲けをも、赤鯨衆は許容しているのだろうか。<br />
　どちらにしても、犯罪に加担する気はない。<br />
「俺は遠慮しておく」<br />
「そうか。欲が無いんだな」<br />
　そうではない。欲の向けどころが小松とは違うのだ。<br />
　逆に言えばこの男の欲は、金に向いているということだろう。目的がはっきりしている分、天満よりも扱いやすいのかもしれない。<br />
　少し、探りを入れてみることにした。<br />
「お前も標準語なんだな」<br />
「……ああ。出身はこっちだが、高校が東京で向こうの寮に入った。関西弁ならともかく、土佐弁じゃあ馬鹿にされるからな」<br />
　あまり思い出したくないのか、口のすべりが悪い。<br />
「赤鯨衆には長いのか」<br />
　話題を変えてみると、今度はぺらぺらと喋り始めた。<br />
「おやっさんほどじゃあない。オレはあの人に拾われたんだ」<br />
　まだ机の上に置かれたままの封筒を、直江に見せる。<br />
「何だと思う？」<br />
　直江が首を振ると、笑いながら言った。<br />
「くっだらない手紙だよ。飯は食ってるかとかそんなことが書いてある」<br />
　手にした封筒でパシパシと掌を打つ。<br />
　おやっさんは俺の親のつもりでいるんだよ、と小松は言った。<br />
　何でも、小松は死んですぐは霊体のまま彷徨っていただけだったそうだ。たまにちょっとした悪さをするような、殆ど害のない地縛霊。けれどある日突然、目覚めると憑依していた。<br />
「このカラダに入った時のことは全然覚えてない。気が付いたらこのナカにいたんだ。困ったよ、ほんと」<br />
　腹を空かしながらとりあえずホームレスのような生活をしていたところ、天満に拾われたそうだ。<br />
「おやっさんはとにかく人が良くてさ。宿無し連中に差し入れなんかもしてたワケ。そんで俺とも知り合ったんだけど、初めて会った一言目がさ、"おんし、一度死んじょったことがあるやろう"だよ」<br />
　その時のことを思い出したのか、本当に楽しそうに笑った。<br />
「赤鯨衆ってのがあるから入れって言われてさ。俺も公園に寝泊りしてたってしょうがないから、仕方なくついてってさ」<br />
　最初は前線付近の補給班に回されたそうだ。<br />
「戦闘なんかに参加したりもしたんだけど、全然ダメ。俺には戦争の才能はないね。まわりの奴らとも全くソリがあわなかったしね」<br />
  直江も日吉砦で数日を過ごしただけだが、確かに独特のノリを受け入れるのに手間取った。直江ですらそうなのだから、街育ちの現代っ子には辛いのかもしれない。<br />
「で、おやっさんが見かねて調達部に引っ張ってくれたんだけど、コレがまた笑ったね。調達部とは名ばかりで、なんも調達出来て無いんだよ。あの人、カネを稼ぐ才能ってのが皆無なんだね」<br />
　それは直江にも分かる気がした。天満は間違いなく人は好いのだろうが、商才と人徳というものは全く別のものだ。<br />
「だからオレが稼いでやってるってワケ」<br />
　小松は眼鏡を外すと、ポケットから眼鏡拭きを取り出して拭き始めた。]]>
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    <category>undiscovered exploit</category>
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    <pubDate>Fri, 25 Sep 2009 11:54:26 GMT</pubDate>
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