アンディスカバード エクスプロイト
undiscovered exploit
新入りは皆、諜報班の聞き取り調査を受けて初めて隊士として認められるのだと、日吉砦長代理の宮本は言った。
それが済むまでは戦闘に加わることはおろか、施設内での行動まで制限される。スパイ対策なのだという。
驚いたことに主戦力となる隊士達の得意分野や戦績などは全て記録しているのだそうだ。以外にしっかりと情報管理が行われている。機密情報などもきちんとデータ化されてセキュリティがかけられていることも確認済みだ。これは高耶の情報を集めるのも簡単にはいかないかもしれないと、直江は思い始めていた。
しかも、諜報班が直江の為に人を寄越すのにあと数日かかるという。ならばその間、いったい何をすればとイラつき始めていたのだが───
「高知市内まで?」
「ほれ、こいつが車の鍵やき」
宮本は簡単に言ってのけた。
「主に資金や物資の調達をやっちょる天満(てんま)ちゅうのがおるき、コレを受け取って戻ってくりゃあええ」
と、なにやらリストのようなものを渡された。
経理や財務管理など、資金繰りの中枢本部は浦戸のアジトにあるらしいのだが、市街地等で実際に資金稼ぎをしている隊士たちの拠点が市内にあるのだそうだ。
「どうしても必要なもんやきに、急いで持ってきてもらわにゃあならん。が、見ての通り今は人手不足でな」
日吉砦内は今、敵方の輸送車強奪作戦を明後日に控え、かなりバタバタしている。
「おんしはまだ正式な隊士にはなっちょらん。だから作戦には参加させられんが、これくらいは手伝うちょくれ」
宮田はそういった後、声と共に身まで低くして続けた。
「だが、あくまでも内密に頼むぞ。岩田さんにもじゃ」
やはり聞き取り調査前では規則違反になるらしい。確かにこれではせっかくの情報管理が意味をなさない。どうやら組織も大きくなると、中々末端まで統率を取るのは難しいようだ。が、直江には関係がない。
「わかった。引き受けよう」
すまんの、と宮田は掌を顔の前で立てると、頭を下げた。
「本来なら神官殿に頼むような仕事ではないんじゃがの」
任務とはとても呼べないような雑務だ。前線とは逆のほうへいくのだから高耶もいない。
相当ストレスを感じたが、新入りでもあることだし仕方が無い。ここはおとなしく従っておこうと思い、車に乗り込んだ。
いざ出発してみれば、砦に来てからずっと気を詰めていたせいか、ひとりで車を運転するのが気分転換になってよかった。
だが、資金調達の本部ともなれば、いわば裏方部門の中枢だ。
そんなところに新入りを寄越していいものなのだろうか。
スパイだったらどうする?現代人だと油断しているのか。敵が現代人を懐柔して送り込む可能性だってあるだろうに。
そこは、ビックネームではない雑霊集団のノウハウの弱さなのかもしれない。
ある程度の規模の組織において、資金源というものは致命的な問題となりうる。
闇戦国の規模が大きくなるにつれ、怨将の現金獲得方法も手が込むようになっていた。
資金源を叩くことは、活動の足止めという意味でも一番手っ取り早く効果的だ。
実際、闇戦国関係で動いている金銭の額は想像もつかない。
とはいえ合法的な資金源を確保できているのは怨将でもわずかだ。上杉は400年のキャリアがあるからそこらへんのノウハウは一番しっかりしている。続いて織田、武田だろうか。
赤鯨衆に関する情報は一蔵から出来る限り引き出していた。
特に金が何よりも好きな一蔵は、資金源に関しては事細かに覚えていた。さすが持ち逃げをしたというだけはある。
聞きながらまず、その手段を選ばない現金獲得手段に驚いた。思いつきでやっているのではないかというほどに行き当たりばったりでハチャメチャだ。"搾取する側から盗る"という幹部陣の意向さえ守っていれば何でもアリだったらしい。直江からしてみればとても考えられないようなものだった。
生き人との無用なトラブルは避けるようにしていたと一蔵は言っていたが、"搾取する側"との小競り合いは少なく無かったらしい。それこそが、肉体を持ち"暮らす"ことの代表的な弊害のひとつであるのだが。
もちろんその話は一蔵がいた当時のものだから、今でも同じとは限らない。が、今向かっている拠点は一蔵から聞いた赤鯨衆結成当時のアジトに近い。古くから在るアジトのひとつかもしれない。
何か重要な情報が得られるかもしれないというわずかな期待が、直江を休みなしで走らせた。
それが済むまでは戦闘に加わることはおろか、施設内での行動まで制限される。スパイ対策なのだという。
驚いたことに主戦力となる隊士達の得意分野や戦績などは全て記録しているのだそうだ。以外にしっかりと情報管理が行われている。機密情報などもきちんとデータ化されてセキュリティがかけられていることも確認済みだ。これは高耶の情報を集めるのも簡単にはいかないかもしれないと、直江は思い始めていた。
しかも、諜報班が直江の為に人を寄越すのにあと数日かかるという。ならばその間、いったい何をすればとイラつき始めていたのだが───
「高知市内まで?」
「ほれ、こいつが車の鍵やき」
宮本は簡単に言ってのけた。
「主に資金や物資の調達をやっちょる天満(てんま)ちゅうのがおるき、コレを受け取って戻ってくりゃあええ」
と、なにやらリストのようなものを渡された。
経理や財務管理など、資金繰りの中枢本部は浦戸のアジトにあるらしいのだが、市街地等で実際に資金稼ぎをしている隊士たちの拠点が市内にあるのだそうだ。
「どうしても必要なもんやきに、急いで持ってきてもらわにゃあならん。が、見ての通り今は人手不足でな」
日吉砦内は今、敵方の輸送車強奪作戦を明後日に控え、かなりバタバタしている。
「おんしはまだ正式な隊士にはなっちょらん。だから作戦には参加させられんが、これくらいは手伝うちょくれ」
宮田はそういった後、声と共に身まで低くして続けた。
「だが、あくまでも内密に頼むぞ。岩田さんにもじゃ」
やはり聞き取り調査前では規則違反になるらしい。確かにこれではせっかくの情報管理が意味をなさない。どうやら組織も大きくなると、中々末端まで統率を取るのは難しいようだ。が、直江には関係がない。
「わかった。引き受けよう」
すまんの、と宮田は掌を顔の前で立てると、頭を下げた。
「本来なら神官殿に頼むような仕事ではないんじゃがの」
任務とはとても呼べないような雑務だ。前線とは逆のほうへいくのだから高耶もいない。
相当ストレスを感じたが、新入りでもあることだし仕方が無い。ここはおとなしく従っておこうと思い、車に乗り込んだ。
いざ出発してみれば、砦に来てからずっと気を詰めていたせいか、ひとりで車を運転するのが気分転換になってよかった。
だが、資金調達の本部ともなれば、いわば裏方部門の中枢だ。
そんなところに新入りを寄越していいものなのだろうか。
スパイだったらどうする?現代人だと油断しているのか。敵が現代人を懐柔して送り込む可能性だってあるだろうに。
そこは、ビックネームではない雑霊集団のノウハウの弱さなのかもしれない。
ある程度の規模の組織において、資金源というものは致命的な問題となりうる。
闇戦国の規模が大きくなるにつれ、怨将の現金獲得方法も手が込むようになっていた。
資金源を叩くことは、活動の足止めという意味でも一番手っ取り早く効果的だ。
実際、闇戦国関係で動いている金銭の額は想像もつかない。
とはいえ合法的な資金源を確保できているのは怨将でもわずかだ。上杉は400年のキャリアがあるからそこらへんのノウハウは一番しっかりしている。続いて織田、武田だろうか。
赤鯨衆に関する情報は一蔵から出来る限り引き出していた。
特に金が何よりも好きな一蔵は、資金源に関しては事細かに覚えていた。さすが持ち逃げをしたというだけはある。
聞きながらまず、その手段を選ばない現金獲得手段に驚いた。思いつきでやっているのではないかというほどに行き当たりばったりでハチャメチャだ。"搾取する側から盗る"という幹部陣の意向さえ守っていれば何でもアリだったらしい。直江からしてみればとても考えられないようなものだった。
生き人との無用なトラブルは避けるようにしていたと一蔵は言っていたが、"搾取する側"との小競り合いは少なく無かったらしい。それこそが、肉体を持ち"暮らす"ことの代表的な弊害のひとつであるのだが。
もちろんその話は一蔵がいた当時のものだから、今でも同じとは限らない。が、今向かっている拠点は一蔵から聞いた赤鯨衆結成当時のアジトに近い。古くから在るアジトのひとつかもしれない。
何か重要な情報が得られるかもしれないというわずかな期待が、直江を休みなしで走らせた。
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アンディスカバード エクスプロイト
undiscovered exploit