アンディスカバード エクスプロイト
undiscovered exploit
直江は驚きを隠せなかった。
死してもなお残る情熱がこの世に留まらせている訳ではなく、死んだ後に見つけてしまった目的のために生きている。どこかで聞いたような話だ。
しかし相手は換生者ではなく、憑依霊だ。
昼間、天満自身が戦は手段であると言ったように、霊にとって憑依し生活するということは、目的のための手段であるはずなのだ。通常、死に際の想いが弱くなれば、自然と力は薄れ、憑依は解かれ、浄化へ向かうはずだ。
手段が他の目的を生む?目的を探してこの世に残っている?
どうなっているというんだ。
(許せるはずが無い)
こんな状況を何故あのひとは許しているのか。
それとも、知ってしまったからこそ放って置けなくなっているのか……。
そう高耶なら、自分に似たこの人間達を放ってはおけない。
こう考えるかもしれない。
赤鯨衆は"何かのきっかけでこの世に残ってしまった霊"が、新たに目的を得、達成し、浄化するための場所だと。
《調伏》行為に罪の意識を抱き続けた彼が、新たな《調伏》方法として赤鯨衆を受け入れてしまったとしたら……。
しかしそれはあまりにも安易すぎる。
もしこんなことを霊たちが皆、口にしだしたら。
どれだけの憑巫が犠牲になる?自分達が400年で犠牲にしてきた宿体や憑坐の数の何十倍?何百倍?
今すぐ高耶の元へ行って問いただしい気分だ。何をしているんだと。何を考えているんだと。
そうなのだ。
今の自分に必要なのは正義か悪かではない。
自分に言い聞かせるようにして、余計な考えを振り払った。
とにかく今は、早く、速く高耶の元へたどり着くことを考えなければ。直江のしたことで結果赤鯨衆が潰れたとして、そのどさくさに紛れてまた居場所がわからなくなりでもしたら困る。高耶を刺激するようなことだけは避けなければならない。
それだけだ。
考え込んでいた直江が顔をあげたので、天満も改めて向き直った。
「小松に聞いてきたこと、全てを話す」
宣言するように告げた直江に、天満は深く頷いた。
ふたりは施設内へもどって来ていた。
天満の手には小松からの手紙がある。
直江は小松についてわかったことを全て話した。
「ほうか……キケンか……」
株式のくだりについてはあまり理解していないようだったが、ヤクザとトラブっているってことだけはわかったようだ。
が、聞いたところでどうしていいのかもわからない顔だ。
「どがいしたらええ。何かいい案はないかね?」
「揉める前に、小松本人に謝らせて手を引かせるしかない。下手な手段に出て本格的なトラブルに発展すれば、小松だけの問題じゃ済まなくなる。金を追ってこっちにまで押しかけて来るだろう。そうなったら厄介だ」
「……小松も、悪いヤツじゃあないんやきのう。手間のかかる……」
天満が困りきったように言った。
「しかし小松が稼げんようになっちょったら、これからの収入はどうするがか?」
「先のことは後で考えよう。問題は小松にどうやって手を引かせるかだ。あなたの説得に応じるとは思えない」
もちろん直江の説得など論外だろう。手っ取り早く手を引かせる方法はないものか。
「んなもんありゃあせん……」
しかし直江は言う。
「無い訳ではない」
俯いていた天満が顔を上げた。
策はある。だが簡単にはいかない。時間も足りないし、人手の当てもない。
「とにかく金がいる。集めておいてくれ」
直江は覚悟を決めて立ち上がった。
死してもなお残る情熱がこの世に留まらせている訳ではなく、死んだ後に見つけてしまった目的のために生きている。どこかで聞いたような話だ。
しかし相手は換生者ではなく、憑依霊だ。
昼間、天満自身が戦は手段であると言ったように、霊にとって憑依し生活するということは、目的のための手段であるはずなのだ。通常、死に際の想いが弱くなれば、自然と力は薄れ、憑依は解かれ、浄化へ向かうはずだ。
手段が他の目的を生む?目的を探してこの世に残っている?
どうなっているというんだ。
(許せるはずが無い)
こんな状況を何故あのひとは許しているのか。
それとも、知ってしまったからこそ放って置けなくなっているのか……。
そう高耶なら、自分に似たこの人間達を放ってはおけない。
こう考えるかもしれない。
赤鯨衆は"何かのきっかけでこの世に残ってしまった霊"が、新たに目的を得、達成し、浄化するための場所だと。
《調伏》行為に罪の意識を抱き続けた彼が、新たな《調伏》方法として赤鯨衆を受け入れてしまったとしたら……。
しかしそれはあまりにも安易すぎる。
もしこんなことを霊たちが皆、口にしだしたら。
どれだけの憑巫が犠牲になる?自分達が400年で犠牲にしてきた宿体や憑坐の数の何十倍?何百倍?
今すぐ高耶の元へ行って問いただしい気分だ。何をしているんだと。何を考えているんだと。
そうなのだ。
今の自分に必要なのは正義か悪かではない。
自分に言い聞かせるようにして、余計な考えを振り払った。
とにかく今は、早く、速く高耶の元へたどり着くことを考えなければ。直江のしたことで結果赤鯨衆が潰れたとして、そのどさくさに紛れてまた居場所がわからなくなりでもしたら困る。高耶を刺激するようなことだけは避けなければならない。
それだけだ。
考え込んでいた直江が顔をあげたので、天満も改めて向き直った。
「小松に聞いてきたこと、全てを話す」
宣言するように告げた直江に、天満は深く頷いた。
ふたりは施設内へもどって来ていた。
天満の手には小松からの手紙がある。
直江は小松についてわかったことを全て話した。
「ほうか……キケンか……」
株式のくだりについてはあまり理解していないようだったが、ヤクザとトラブっているってことだけはわかったようだ。
が、聞いたところでどうしていいのかもわからない顔だ。
「どがいしたらええ。何かいい案はないかね?」
「揉める前に、小松本人に謝らせて手を引かせるしかない。下手な手段に出て本格的なトラブルに発展すれば、小松だけの問題じゃ済まなくなる。金を追ってこっちにまで押しかけて来るだろう。そうなったら厄介だ」
「……小松も、悪いヤツじゃあないんやきのう。手間のかかる……」
天満が困りきったように言った。
「しかし小松が稼げんようになっちょったら、これからの収入はどうするがか?」
「先のことは後で考えよう。問題は小松にどうやって手を引かせるかだ。あなたの説得に応じるとは思えない」
もちろん直江の説得など論外だろう。手っ取り早く手を引かせる方法はないものか。
「んなもんありゃあせん……」
しかし直江は言う。
「無い訳ではない」
俯いていた天満が顔を上げた。
策はある。だが簡単にはいかない。時間も足りないし、人手の当てもない。
「とにかく金がいる。集めておいてくれ」
直江は覚悟を決めて立ち上がった。
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